大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ラ)564号 決定

本件記録によれば、本件訴訟の原告である抗告人は東京都内に住所を有し、被告両名は何れも福岡市内に住所を有すること、抗告人主張の請求の趣旨及び原因並びにこれに対する被告等の答弁が原決定一枚目表一一行目から三枚目裏一行目まで(但し更正決定により更正されたもの)に摘示されたとおりであることが明らかである。右の事実によれば、本件訴訟の審理にあたつては、本件遺産の分割を廻る紛争に関与した親族等の証言ないし供述が重要な証拠となるであろうことが窺われるが、右の親族等は抗告人を除いてはその多くが福岡市内に居住するものであることも本件記録上明らかである。そうだとすれば、本件訴訟を福岡地方裁判所に移送することなく原審において審理する場合には大部分の証人を福岡から呼出すか若しくは嘱託による証拠調によらざるを得なくなり、そのためには相当額の証拠調費用を要するか若しくは重要な証人について受訴裁判所が直接心証を得る途を断念した上審理の相当な遅滞をも甘受しなければならない。もとより本件が福岡地方裁判所に移送された場合には抗告人が裁判所への出頭その他の点で不利益を受けることは当然であるが、逆に本件が原審で審理される場合には被告等が同様な意味の不利益を受けることになり、右のように双方の受ける不利益の程度に差異があることを窺わせるような特別の事情も見当らない本件においては、前示したように移送によつて一層適正で迅速な裁判を得られる利点を重視すべきであつて、以上の点を総合するときは本件は著しい損害又は遅滞を避けるために福岡地方裁判所に移送することが必要な場合であると認めるのが相当である。管轄の競合がある場合に原告にその選択権があることは抗告人主張のとおりであるにしてもそのことの故に右の判断を動かし得るものではないし、右の判断が被告の利益のみを慮つたものとなすこともできない。

(大場 下関 秦)

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